『夜のピクニック』 恩田陸

夜のピクニック

夜のピクニック

 本屋大賞吉川英治文学新人賞を受賞している本作。
 吉川**新人賞と云われてももひとつピンとこないけど本屋大賞となると触手は動く。
 誰が考えたのか知らないけどいい企画だ本屋大賞。読むべき本を選ぶ際僕が参考にしているのはやっぱりなにかの受賞作というのは外せなくて後は人気作というのもある。他にもあるけどこの二つはなんだかんだ結構大きい。ただ後者はあてにならないことがままあり前者はなんというか”遠い”感覚があっていざ読んで楽しみとしての読書を感じることがないことも多い。で本屋大賞っていうのはその中間に位置するありがたい賞なのね僕としては。似たような立ち位置として年末とかに出る読者ランキングを元にした賞もあるけどあれはちょっと違う。あれは猛者。本好きっていうか本読みの猛者。だからかなり濃ゆい作品がランクインしてたりする(ような気がする)。本屋大賞はそこいくと本好きで平和な人々。もっと云ってしまえば本好きで平和な可愛らしい女性店員な人々(オレの世界に男店員などいらん)。僕の憧れ。そんなわけでなんだかとっても心にやさしい印象がある企画なのだ。
 まだ2回しか実施されていないけど第一回が小川洋子の『博士の愛した数式』でこれがまた静かないい小説だった。傑作というよりは良作というような。『夜のピクニック』もやっぱり良作。
 表紙の画をみると小学生の話なのかと思ってしまうが高校生が主人公。
 高校生活最後の行事である歩行祭(全校生徒が80kmを一日かけて歩くまたは走る)を通して高校三年生の彼彼女の恋愛・友情・家族が語られる。ずるいくらいど直球な青春。わあずるい。僕はここに描かれてるような素敵な青春なんて送ってないけどあちこちの場面を繋ぎ合わせてそれでも駄目でどこかで経験したはずだと記憶を捏造してフルフル感慨に耽るのであった。ああ寓話っていいよね(キャラがみんないい奴っぽいのだ。羽海野チカさんが吉本ばななさんとの対談で語っていたこと。ハチクロのキャラは悪者がいないと。現実はもっとドロドロだと。そんな意見が読者からあるらしい。で彼女はリアリティについて思い悩んだらしい。でも自分が描きたいのは寓話なのだと。だからこれでいいんだと。思ったらしい。うろ覚えだがそんなことを思い出した。)。