『みんな元気。』(新潮9月号)舞城王太郎

 相変わらずファンタジーというか妄想炸裂気味の本作。
 空飛ぶ一家が登場する。七つの?竜巻を伴って現れた空飛ぶ一家の家はその竜巻の上空、先にありその様はまるで天空の城ラピュタのよう。彼らの息子と、妹を強引に交換された主人公の少女らの一家。パパは車に乗ってさらに竜巻に乗って攫われた娘を奪還せんとラピュタを目指す。眠ると宙に浮かぶことのできる姉は空を飛んで、主人公ミワは竜巻に飲み込まれた木にしがみついて妹を目指す。
 序盤はそんな話だ。
 
 こう書くとなんだか一般的な冒険ファンタジー小説みたいにも思えるが実際は違くていうなればやはりそれは妄想としかいいようがない気がする。村上春樹の影響が語られることの多い著者。そういえば村上春樹の小説もファンタジー色が強い。ただ村上氏の作品が一定して静けさに充ちどことなく現実感がないのに対し、舞城氏の小説は展開こそ現実離れしているものの語り口は僕にとって日常に近くそのアンバランスさにしばしば戸惑うことがある。まあそれが魅力でもあるのだけど。

 というわけでまたしても、なんだこれは、と思う僕であった。テーマがわかりやすい?のでまだ救われているけど。