がわかる本 町山智浩
『2001年宇宙の旅』というと、雑誌なんかで特集される著名人のアンケートなんかではもれなくベスト10に挙がるような名高い作品なわけだが、それを目にする僕の思いは、ホントかよ、というものであった。
たしか通して観たことがあるはずだ。つまらなかったけど。
というのが僕の『2001年宇宙の旅』に対するおぼろげな記憶だからだ。
というかたぶん”わからなかった”んだろう。
”わからない”ものはたくさんある。
わからない故に面白いと感じるものもあるし、わからない故につまらないと感じるものもある。その差はどこにあるのだろうか。なにか、考えれば思いつきそうな気もするのだけど(実際いくつか思いあたるのだけど)よくわからない。なんだろう。わからなさの程度だろうか。やっぱりよくわからない。
とにかくこれは、わからない→つまらないもの、の一つだった。もう冒頭から(猿が骨投げてそれが宇宙船らしきものに変わるというシーン)僕にとっては謎であったし。
その謎がわかりやすうく解説されておるのがこの本だ。
これを読むと、僕のつまづいていたところはごく表面的なところであったことがわかり、さらにその奥にも謎があることに驚かされる。僕の愚かさ加減に驚いたのだ。しかし、映画そのものよりそれを解説した本のほうが面白いというのはどういうことなのか、とも思われるが、謎解きがなされた後では、映画も面白そうに感じる。これだけわからないことがあったのかと答え合わせ的な楽しみがやってまいりました。そんなところだろうか。まあ僕は昔から答え合わせが大好きであるからね。
それだけではなくて、この本では、1967年から76年ごろの有名な映画をいくつも取りあげて解説してくれている(このころのハリウッド映画は、すっきりはっきりとした「ハリウッド・エンディング」を拒否していた特殊な時代だったとのこと)。『タクシードライバー』とか『地獄の黙示録』とかあれやこれや。中には『ロッキー』なんていう、わかりやすうい、ものが意外にもあるのだが、これがまたこれまでの観方が変わるような情報があったりなんかして、スタローンがちょっと好きになったりする。ちょっとどころかすごい格好いい。
これ、偶然にも最新号の『spoon』(hanae*ちゃんと石田衣良の対談が載っているやつ)でも紹介されていた。読書リゾートという特集らしい。よく読んでないからどんな企画なのかわからないのだけど、まあリゾートとは縁のない人も、いわゆる名作といわれているような映画を観て”わからねえ””つまらねえ”と不気味なものを感じている僕のような人はこの本を読めば、ああああああああ、と救われるはず。