モンスーン

 著者、寸。
 福田和也氏が著書で、「町田康氏がパンク・ロックの生理を日本の書き言葉に持ち込んだとしたならば、寸氏はヒップ・ホップの生理を文章に持ち込んだ」というようなことを云っていたと思うのだけど、それを読んで、ああなるほどね、と思うのも事実だが、それって一体どういうことなんだ、と思うのもまた事実で、ようするに僕はよくわかっていないということ。
 福田氏はまた、「モンスーン」を評して、”新しい”、ということをさかんに云っているが、僕はそれほど新しいとは思えない。どこかで出会ったことがあるようなスタイルだと感じる。ただ、面白さ、を節操なくかき集めたという印象。”ヒップ・ホップの生理”というのはそういうことも含んでの文句なのだろうか。”新しい”というのは、場を越えて散らばった面白さを一つにまとめあげたということなのか。形容に困る本ではある。小説ではないし、コラムでもないような気がするし。散文集とでも呼ぶしかないのか。雑誌的な匂いはあるな。
 となんだと云っておりますが、わけのわからなさ、得体の知れなさ、も含めて、刺激的なことは間違いがなくて、とても面白い。なんかこう未知の物体なり世界なりがチラッと仄見えたような気にさせてくれる面白さ。借りて読んだんですけど、買いますよ僕は。正体つかんでやりますよ。
 やっぱり”新しい”というしかないのかなこれは。こんなのアリか、というようなのを探してる人は読んでみるといいと思う。
モンスーン