続・奇想とユーモアとペーソス

「ふたりジャネット」読了。
先日の記述では、わからない、などと云いましたが、これ、面白くないということではないのですよ決して。細部まではわからないが、一作一作の醸し出すイメージというのは漠然とつかめるので、矢印が全体としてどっちを向いているかはわかります。ただ、地名であったり、物であったり、が著者の界隈(アメリカでしょうか)で持つ共通した意味が僕にはまったくわからないわけで。それがわかるのとわからないのでは、面白さがまるで違うんだろうなと思ったというだけのことなのです。
読んでいる最中は、展開が面白いだけに、わからない部分が殊更じれったく感じられましたが、振り返って思うと、どれも面白い。どの短編も違った味を持っていて、編訳者が云う「サ・ベスト・オブ・ビッスン」という言葉も、僕自身よくビッスンのことも知らないのに、そうかもしれないと思わせてくれる。
ただ気をつけなければならないのは、全九編の内でもっとものっぺりとした(僕にはそう感じられた)「熊が火を発見する」が最初に収められているということだ。これだけを読んで、次を読む気を無くす(僕がそうだった)こともあるかもしれないが、それはもったいない。その先の八編はのっぺりとは無縁である。たしかに「奇想コレクション」だ、と思わせてくれるものばかりだ。中でも、”万能中国人ウィルスン・ウー”シリーズの「穴のなかの穴」「宇宙のはずれ」「時間どおりに教会へ」は僕の抱いていたSF・奇想小説というもののイメージに近く、抵抗なく楽しめた。シリーズであるということも読みやすかった理由だろう。