蹴りたい背中

期待通りというか、期待以下でもなかったがそれ以上でもなかったというか、まあそれなりに面白いものではある。
ただ芥川賞という言葉に対して勝手にものものしい重さを押し付けていた僕としては、そのギャップに戸惑ってしまう。すばる文学賞とかなら、なるほどね、とすらっと納得できそうだけど、芥川賞となると、これでいいのか、と思ってしまうのが正直なところだ。
だって凄みがないんだもの。
そういう風に感じてしまうのは、やっぱり偏見だったりするのかしら。


でもまあ芥川賞の目的としては、今回は成功したということになるんだろうし、
よくわからない冴えない人が受賞するよりは良かったと思う。文藝春秋が100万部を突破したとか、両受賞者の本が売れに売れているとかいうことだし、新進作家の育成と売上増という文芸復興のための目的は立派に果たしている。
ただちょっと売れすぎじゃないかと思うけど。
蹴りたい背中」しか読んでないのでそれについてしか云えないが、確かに面白い作品ではあるし、読みやすい、入りやすい話で、万人受けする要素はあると思うが、そこまでこぞって読まれるほどのもんでもないだろうよ。なんかうっすら気味が悪くなるほど売れてるもんねえ。

ちょっと可愛いから売れただけじゃん。
芥川賞も地に落ちたね。ケッ。

もし僕が彼女と同年代のぶさいくな女の子ならまず間違いなくそう思っただろうが、幸い僕はぶさいくな女の子ではないのでセーフ(ぶさいくかどうかは別として)。よしもとばななの恋愛小説読むくらいなら、断然綿矢りさを読むね。そう断言できるほど作家としては奇跡的なほど彼女はかわいいと僕には思える。もしかしてこれからはちょっと可愛くないと本も売れないという時代が来るんだろうか。それはなかなか悲惨な世の中だが、僕としては歓迎こそすれ悲観する理由などありはしない。作家の顔の良し悪しというのは、読んでる最中は実はそれほど気にならないんだけど、それでもやっぱり、買おう、読もう、とする際の引力には関係するのだ。というわけで次回作にも期待。

ただ「蹴りたい背中」一作で単行本というのはちょっと薄くてパフォーマンスが悪いと感じる。三作くらいまとめて載せて2000円くらいが妥当なんじゃないのかな。