鐘の声のかわりに聴こえたもの
昔の家庭用ゲーム機のソフトの形状はカセットだったわけだ。ガッチャンコとカセットを差し込むわけね。で使い込んでくるとよくこなれてきてやわらかくなって使いやすくなり艶がでてきたりする。そんな風に野球のグローブみたいな皮革製品のようにはもちろんならなくて、ただただ調子が悪くなる。一番困るのは、接触が悪くなること。差し込んだカセットの角度を調節しないと機能しなくなってくる。これがまたえらく繊細かつ微妙で、愛着が湧いてくる、ということはやっぱりなくて、イライラするだけ。こうなってくると、差込口に対して、フーッと息を吹きかけてほこりを払っても駄目で、剥きになって息と一緒に唾液まで吹きつけてしまうともっと駄目。果敢なトライの結果ようやく見つけた角度を保つため本やらテープやらで固定する。でその苦労して見つけたポイントは明日にはチャラになっていたりして子供ながらに、俺は何がしたいんだ、という自戒の念をおぼえたりおぼえなかったり。でもまあ愛しのゲームのためならえんやこらということで、プレイが始まればそんな苦労もすっかり忘れてのめりこんでしまうのだが、その盲目的な愛の結果として、あまりにも残酷な仕打ちが待ち受けていたりする。ちょろっとコントローラーを引っ張っただけのわずかな振動で、ブラウン管は闇の世界へ。「無駄無駄無駄無駄ああ、俺の時間無駄あああ」と誰かの叫びが聴こえた気がした。
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ
「平家物語」
そんなわけで、ゲーム終盤になってデータがとんだドラクエⅤが、モーレツにやりたい。
ちなみに僕はフローラを選んだ鬼畜です。