風の歌がびゅーびゅー聴こえる

ものすごい風が吹いている。
こういう日はスカート女子は大変だなあ。こんな風に、風が強い=スカートまくれる、と直結してしまうあたり、僕はかっこよくない。風が強い=いい波(サーフィン)とならない。サーフィンやったことない。海嫌い。
僕が中学高校生だったころ、いつも利用していた最寄の地下鉄の階段は、いつも突風が吹いていた。下から上に向かってびゅうっと不意にやってくる。その駅は近くの女子高の生徒も利用していて、びゅうっとなると、彼女たちは必死にスカートをおさえたものだ。その反射速度はなかなかのものだ。そんなに必死にならなくてもいいのに。でもなかには、反射しきれない娘もいる。満員電車で疲れているのか、朝早くてぼーっとしているのかわからないが、びゅう、ふわー。だいたい白です。僕としても、なにも覗き込んでいるわけではなくて、前を見て階段を上っていたら飛び込んでくるわけで、その時は、嬉しいとかじゃなくて、ただ、あっ、って時が止まります。ふわあーっとなった女子は、慌てて後ろを確認することは経験上100%で、こちらとしても彼女を安心させるべく、そしらぬフリをするのですが、たまにこっちもぼーっとしていたりして、ばっちり視線がぶつかることがあります。壇上から見据えたその瞳は恐ろしいもので、どうしてよいのかわからず緊張感が漂います。咄嗟に僕は、微笑み、右手の親指を立てました。何も心配することはない。確かに僕は君のパンティを見たが、素晴らしいじゃないか。見事なもんだった。という意味をこめて。とても長い時間に感じられた。もしかして逆効果で、泣き出したりしたらどうしよう、という不安が頭をよぎった。その間にも僕は階段を上る足を止めてはいなくて、どんどん彼女に近づいている。僕は漫然と前だけを見るようにして、もう彼女の顔はみないようにしていたけど、視線を感じる。まだ僕を睨みつけているんだろうか。あと3段、あと2段。彼女に並ぼうとしたその時、もう一度だけその顔を確認した。できるだけさりげなく、精一杯さわやかに。視線がぶつかる。諦観したかのような表情に血の気が引く。怒らせちまったのか。でももう後には引けない、僕はまたニコリ。すると彼女は笑ってくれた、はにかんだように。それが今の妻です。嘘です。