拳闘士の休息

トム・ジョーンズ「拳闘士の休息」読了。


これはすごい。掛け値なしの傑作だ。
以下に表題作である「拳闘士の休息」の書き出しを抜粋。

「拳闘士の休息」トム・ジョーンズ

 ヘイ・ベイビィは、M−14ライフルの仕様についてノートを取っていなければならないときに、女に手紙を書いていて、見つかった。俺たちは基礎訓練キャンプが始まったばかりで、うだるように暑いプレハブ兵舎 ――― 一九六六年の八月、サンディエゴにある海兵隊の新兵補充部隊 ――― の中で机に向かっていた。ライト軍曹はヘイ・ベイビィの手から手紙をひったくるように取り上げると、その晩居住棟で、海兵隊263小隊の新兵全員を前に、皮肉たっぷりにそれを読み上げた。「”ヘイ、ベイビィ!”」と軍曹は始め、中身を読み進むにつれて怒りと嫌悪のボルテージを上げていった。”ロージィ・ロクデナシ”への手紙である、と読み終わった軍曹は言った。だが、本当に大事であり、真の問題であり、最も重要なことは、ムンムンに蒸れた”ロージィ・ロクデナシ”のパンティなどではない、M−14の銃口初速だ。

この短い文章で彼の文章の魅力がどれだけ伝わるかわからないが、その奇跡の断片は、確かに、ある、と思うのだがどうだろうか。

さあ皆のもの、復刊ドットコムへリクエストするのだ。