蛇にピアス

読んだ。

金原ひとみ蛇にピアス
どういうわけだか綿矢りさ=善玉、金原ひとみ=悪玉、という構図が僕の中にできあがっていて、綿矢りさの小説さえ読んでしまえばとりあえずよかったんだけど、思いがけず図書館で時間を潰すことになり、他に適当なものが思いつかなかったので一気読みしてしまった。
これについては、幸運なことに、芥川賞受賞作といえど何ら期待を持たずに読んだわけなのだが、あまり幸運でもないのは、ちょっと時間に追われていたということだ。その塩梅がちょうどよかったのか、期待しなかった状態以下でも以上でもまたないということになった。
さすがに壁に叩きつけたくなるようなひどい代物でもなかったが、いったいこの小説の何処らへんに輝きがあるのかがまるでわからない。確か宮本輝だったと思うが、この作品を評して、”ディティールが描かれていない。が、それはきっとわざと省かれたのだろう”というようなことを云っていたはずだが、なるほどディティールがない。で、だからどうしたというのだろう。ディティールがないということは小説にどういう作用を及ぼすのだろう。細部を描かないことによって得られる効果があるとしたら、おがくずの詰まった僕の脳味噌で思いつくことといったら、勢い、くらいだ。そんなものあったか。チャッチャッと読んでしまおうと思ってかなり集中して読んだから、それなりに短時間で読めてしまったことは事実だが、それは文章に勢いがあったからではなくて、僕の努力によるところなんじゃないのか。でもまあどうしようもないものならいくら努力しようが読めやしないんで、少なくとも高橋源一郎の「ペンギン村」よりは面白かったと云っておこう。若手エロ作家として頑張ってほしい(勃起タイム5秒)。