森博嗣「四季 夏」

四季四部作の二作目。
前作が真賀田四季個人にほぼフォーカスが絞られていたのに対し、今作では著者のシリーズを愛読しているものなら馴染みの深いキャラクタが総登場といった具合で一層楽しめるのではないか。萌絵は出てこないけど。 
基本的にこのシリーズはミステリとして描かれていたはずだが、今作(今シリーズ)ではその要素は薄い。それなりに人は死んでいくが、謎解きの趣向はない。
ただ著者の作った最大の人気キャラクタ?である真賀田四季の人生をトレースしていくのが目的であるためか。僕としては、著者の描く天才と同時に、彼らを取り巻く個性的なキャラクタの無意味な会話が気に入っていたので、天才の視点が延々続く展開に集中力を欠いてしまうこともしばしばであるが、それでもさすがにこの人は構成が巧みで、するすると読めてしまう。 
ただなんとなく物足りないと感じるのはなぜだろうか。
このシリーズが四作(あとニ作ある)であるということを知っているからなのか。四作のなかの二作目であるからなのか。謎解きがないからなのか。いずれにしても全部まとめて読んだほうがなにかと都合がいいように感じる。
しかしあれだ、以前の作品との繋がりがあるのはそれらの既読者としては嬉しいが、その内容を大雑把にしか憶えちゃいないのでなんとも複雑な気分になる。著者の森博嗣は、研究書などを除き、読書スピードは遅いが、一度読んだものは細部まで憶えているので読み返すことはない。だからバンバン捨てていく売っていく。という憎らしいことをどこかで発言していたが、読むスピードも遅く、かつ記憶も定かではないお馬鹿さんの僕など、いじけてしまいそうである。
悔しいので、読み返してやんない。