ロバート・アルトマン「M★A★S★H」
どこかひねた作品を作る監督として僕の中では記憶されているアルトマン。「ゴスフォード・パーク」はちょっと手におえない感じだったが、それくらいで僕の中の彼の地位は揺るがない。今作ではカンヌでグランプリを受賞しているということだし期待して観る。
期待なんかするもんじゃねえ。
どういうわけか(パッケージの印象だろう)もっとさばけた画を予想していたのに普通だ。普通に古い戦争映画を観てるみたい。序盤の展開もいまいちどう理解してよいのやらわからないし(はい、僕は阿呆でございます)、主演であるはずのドナルド・サザーランドもふざけた野郎にしかみえない。真面目なロバート・デュバルをからかってるし。嘲笑にもめげずに祈りを捧げるロバート・デュバルのアップ。よくわからない歌を歌うサザーランドたち。
耐えられねえ。
一日の締めくくりとして”淡麗”を飲みながら軽やかな気分に浸ろうとしていたのに台無しだ。そこで鑑賞をストップし禿げても渋いロバート・デュバルの顔面にとりつかれたまま就寝。
翌日夜、懲りずにまたチャレンジ。
今度は期待なんてしてやんないのだ。
しかし、鬼門であるロバート・デュバルの祈りとその悲しさを浮き彫りにするかのような陽気な歌以降、様子が変わる。デュバルに対する時は相変わらず苛めっ子であり、ついには彼を追い出してしまうサザーランドだが(デュバルには特に落ち度はないように僕には見える。ただただクソ真面目だっただけだ)、にもかかわらず魅力的に映り始める。待望のエリオット・グールドも加わり怪しさ倍増。軽妙さの中にもセンチメンタリズムを感じさせるツボを押さえた構成で、デュバルなんてそっちのけ、ユーモアがないと駄目なのよデュバル君などと思う始末。唐突なラストも実に潔い。やっぱアルトマンいい。